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2021年04月04日
「 ホームステイ 」
私が住んでいたアメリカのサンタバーバラという場所は、ロサンゼルスから車で二時間の所にあります。
スペイン人によって開拓された事から、街全体の建物はスパニッシュ風にオレンジの屋根と白い塀で統一されていて、ヤシの木沿いにはかわいい雑貨屋が並び、町の子供たちはローラースケートや二人こぎの自転車などで海沿いを走って遊んだりしています。かつて話題にもなったマイケル・ジャクソンのネバーランドがあり、ブラッド・ピットやウーピー・ゴールドバーグなど、数々の有名人が住む高級別荘地でもあります。
かわいい街に大はしゃぎし、私はバラ色のアメリカ生活を夢見てウキウキ。
生まれて初めてのホームステイ先は、ダウンタウン(街の中でも一番栄えている場所)から、車で約30分の所。
そこに到着してドアの前でホストマザー(家主)を呼んでみた。
「Hello!」
「・・・・・」
「Hello!?」
「・・・・・」
「えーっ!誰もいないの!?」
困っていると、ロサンゼルスから乗せてきてくれた身長190センチはある巨体の運転手が現れドアをガンガン蹴り始めた。
「えーっ!そんな事していいのー!?」蹴り破いたドアから誰もいない家にズカズカ入り、大きなスーツケースをいくつも置いてこう言った。
「GOOD LUCK!!」
まるで、ムービースターのような彼に、「アメリカ人てかっこいいー!」と思ったのも束の間、一瞬で我に返り家中を見渡した。
ガラーンとしていて家具らしきものがない・・・。
じゅうたんもテーブルも、イスもカーテンまでもない。
「本当に人が住んでいるのかなぁ?」
不安のまま3時間が経過した頃、若い女の人がやってきた。この女性が私のホストマザーでした。
「Nice to meet you!」
「Nice to meet you too!」
と簡単に挨拶し、夕食時には折り紙を使って鶴の折り方や日本のお土産(着物の生地でできたエプロンなど)を紹介して楽しい会話をしました。不安ばかりだった私は、ホッと一安心。家具がない事も引っ越したばかりなんだろうなぁくらいにしか思わなかった。
何もない自分の部屋に戻り、目を閉じたが緊張で眠れない。そんな時、真夜中なのにリビングの方で物音がする。
「何だろう?」怖いけど、トイレに行くのに通らなきゃ。
恐る恐る電気を点けて見渡すと・・・
「うさぎ!?」
知らなかった・・・。夜になると3匹のうさぎをリビングに放して散歩させているらしい・・・。
そして翌日、朝ごはんを食べようと床に座ると、視界に飛び込んできたものは、うさちゃん達のフン・・・。
「見なかった事に・・・。」さて、気を取り直して洗濯でも・・・。
「うそぉ!?」
なんと、2畳ほどしかない洗濯機ルームのドアを開けると足の踏み場もないくらいに、うさぎのフンが散乱し、それを踏んでうさぎ達が歩いていた。立ち尽くしている私の横をその足で脱走してきて、私は一人でてんてこ舞い!
聞けば、洗濯機も壊れて使えないと言われ、バケツに水を汲み洗濯物を洗う事が登校前の日課となった。
家の中に家具がないのもそういった物に全く興味、関心がないだけだったらしい。
かくして、掃除嫌いのホストマザーに代わり
早朝4時半起床、お弁当、朝食作り、食器洗い、掃除、洗濯、うさぎの世話を済ませて
カギが壊れて開かないドアを蹴って、全力疾走でバス停まで行き登校
という主婦兼学生というハードな生活が始まったのです。
つづく。